2023年9月16日(土)にエコミュージアムおさしまセンター(以下エコミュージアム)との共催で自然観察会2023秋を開催しました。
今回は音威子府村、天塩町、中川町、稚内市、美深町、名寄市、旭川市から計20名の方々にご参加いただきました。
朝9時に中川研究林庁舎に集合し、さっそく目的地へ出発!車中では上音威子府地区の歴史を解説をしながら進みました。
しばらくすると樹皮が大きくはがれたアカエゾマツの木が見えてきました。これはヒグマの背こすりに使われた木(写真右)です。背こすりとはヒグマの繁殖期に多くみられる行動で、他のクマとのコミュニケーションを図っていると言われています。
現地では実際にヒグマの体毛や爪痕を確認し、ヒグマの存在を近くに感じることができました。
次に、研究林内の一部にはオソウシナイ層という約8300万年前の地層があり、大型二枚貝の化石などが産出される場所へ。
10分ほど化石探しを行いましたが、次々「見つけた!」と声が上がっていました。
右の写真はスフェノセラムス・シュミティと思われる化石です。大型の二枚貝でV字のような模様が特徴的ですね。
化石探しをしている横で、サクラマスが遡上している様子が見られたので、サクラマス(ヤマメ)の生活史の解説をしました。
川で生まれたヤマメが成長して、全てのメスとオスの約半分が降海し、1年後サクラマスになって生まれた川へ戻ってきます。
また、川にサクラマスがいるのは海からその地点までに遡上が不可能となる落差工などが存在しないことを意味しています。
少し行くと大規模にクマイザサが開花し、枯れた場所へ着きました。
ここではササの生態と開花の周期について説明しました。今年全道的に開花しているのはクマイザサでもう一つ広く分布しているチシマザサは大規模な開花はしていないこと、その周期はまだ解明されていないものの様々な記録があることなど、とても興味深いトピックでした!
さらに進んで標高450mほどまで登ってきました。じっくりと地面を観察すると、季節外れのミヤマスミレやアイヌタチツボスミレ、ノウゴウイチゴがひっそりと咲いていました。本来なら春~初夏に咲く花ですが、標高が高い風衝地という特殊な環境のため、秋に開花したようです。
当日は他にもホロムイリンドウやエゾフユノハナワラビなど亜高山帯の植生を見ることができました。
昼食後はエコミュージアムを学芸員である川崎映氏のご案内で見学しました。
エコミュージアムには筬島の地を愛した彫刻家、故砂沢ビッキの作品が展示されており、まるで自然そのものを表すようなその世界を間近に見ることができました。
最後はエコミュージアムからほど近くにある松浦武四郎が「北海道」を命名したとされる場所へ。
ここは天塩川へのアクセスも容易なため、川岸で生き物と珍しい石の観察を行いました。
カワシンジュガイ、ウグイ、フクドジョウ、ウチダザリガニが採捕されそれぞれの解説に参加者の皆さんはうなづきながら聞いていました。
今年は春、秋ともに自然観察会を開催することができました。どちらも盛りだくさんの内容で参加者の皆様には楽しんでいただけたのではないでしょうか。
普段なかなか入ることのできない研究林とそれを取り巻く自然や人。そこにはどんなものがあるのか、今後もこのようなイベントで発信していけたらと思います。
(中川研究林 高橋悠河)